維持・管理・改修

時代を生きてきた建物には、経過した「時」、人々の思い、足跡が残っています。
それは、多くの人々の手によって支えられてきた歴史です。

「時」の経過は「数寄屋」にとって、味わいを増すと同時に、手入れを必要とする宿命をもっています。日本の気候風土は「数寄屋」に魅力を与える要素ですが、それはまた、寿命を左右するものにほかなりません。

木造建築の中で特に繊細な「数寄屋」は細やかな愛情がそそがれて今日に伝え、残されてきました。多くの方々が日本の木造建築に感じる美しさは、時間が造ったものともいえます。

「数寄屋」の維持管理についてそのポイントを整理してみました。

藤森工務店

柱脚・外部幅木・土台

・症状:腐朽・シロアリ
・原因:雨水・湿度・土中の水分
・進行の様子:2~3年で深刻な状況となる。原因が取り除かれない限り害は進行する。
・対応:外観では発見しずらいため、予防が最善。雨が掛からない工夫・風通しを良くする・防虫剤。

水周りの木部や壁

・症状:腐朽・シロアリ
・原因:漏水・撥ね水・溜り水
・進行の様子:2~3年で深刻な状況となる。原因が取り除かれない限り害は進行する。
・対応:外観では発見しずらいため予防が最善。予止水・水切れの工夫・排水の改善・防虫剤。

金属屋根

・症状:錆・穴あき
・原因:雨水、異種金属同士の電喰
・進行の様子:雨水の場合雨漏りが起きるのに20~30年前後かかる。電喰の場合は1年程度の場合もある。
・対応:定期的に観察して錆の進行を把握する・さび止め塗装・異種金属同士の接触を避ける。

桧皮葺・杮葺屋根

・症状:腐朽
・原因:雨水
・進行の様子:雨水による自然劣化は表面に現れ、葺き替えの時期は30年程度。
・対応:定期的に観察して劣化の状況を把握する。

軒先の木部

・症状:腐朽
・原因:雨水・樋の変形による溜り水
・進行の様子:10年程度で深刻な状況となる。
・対応:外観では発見しずらいため、予防が最善。水切れの工夫・樋の修理。

・症状:変形・脱落・腐朽
・原因:雪・雨水
・進行の様子:状況により数回で機能が損なわれる。
・対応:雪の前に樋を外しておく。雪止の取付。
・強固に取付ける。

建屋全体

・症状:柱の傾き・床の不陸
・原因:盛土による圧密沈下・漏水による地盤の空洞化
・進行の様子:圧密沈下は初期に大きく変位し経年と共に変位量は減少する・漏水による場合は突如変位する。
・対応:状況により造作の修正で済まなければ曳屋して基礎をやり替える。

修復事例

靖国神社茶室(修復)靖国神社茶室(修復)

靖国神社茶室(修復)

池の漏水が原因で床下の土砂が流されて空洞化を起こしていたため建物が大変傷んでいた。そのため、建物全体を1m持ち上げ(曳家)杭を打ち、更に地中梁を構築するという一年がかりの工事となった。

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